恋した責任、取ってください。
 
大地さんと入れ替わるように面談ルームに顔を出した佐藤さんに、直前の大地さんの様子を報告する。

チーム全員が大地さんを気にかけているのはもちろんだ。

でも、もしかしたら、不機嫌な顔を隠そうともせず「ヘタレなのはあの人ですから。一発ぶん殴ってやりたいくらいですよ」とテーブルを拳で軽く叩く佐藤さんが一番、大地さんのことを心配しているのかもしれない。


「佐藤さんって、ほんと大地さんのこと好きですよね。佐藤さんのフローズンアイは親愛の情です。それは、大地さん本人が一番よくわかっているはずです。大地さんが浮上してくるまでは、みんなでサポートしましょう」

「……そうですね、物騒なこと言ってすみません」

「いえ、大地さんはチームの柱です。私は柱が傾きかけたときに支えるためにここにいます。佐藤さんだって黙っていられるわけがありません。高浜さんだってザキさんだってルイネエだって、みんなみんな、大地さんを待っているんですもん。お気持ち、わかります」

「そう言ってもらえると……」

「大丈夫ですよ。きっと、全部大丈夫です」


佐藤さんが大地さんのぶんまでカバーし、得点を稼いでいるおかげで、チームは今、勝てている。

今一つエンジンがかかりきらない大地さんに呆れているわけじゃなく、早く浮上してこい、とそれだけを思って、佐藤さんもみんなも戦っている。


春に佐藤さんが教えてくれた〝ライバルチームに3年ぶりに復帰する選手がいる〟〝その人と戦いたくないから逃げてるだけ〟というのは、大地さんの様子や、恵麻さんやコーチがよく口にする〝因縁のライバル〟という言葉から、ファイヤー・ホーネットのセンター、葛城彰匡(かつらぎ あきまさ)という選手なのだということは、もうずいぶん前から私の中で察しはついていた。

誰に聞かなくても他チームの情報は自然と入ってくるし、その中で佐藤さんの言葉に該当するのが、ファイヤー・ホーネットの葛城さんだっただけだ。
 
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