恋した責任、取ってください。
 
ただ、佐藤さんも、大地さんと葛城さんの関係がどういうものであるのか、というところまでは知らないらしい。

ブルスタ創設時からのチームメイトである高浜さんや、恵麻さん、御手洗コーチあたりといった3年以上一緒にシーズンを戦ってきた人なら知っているとは思う。

けれど、大地さんが佐藤さんの言うところのヘタレな状況から浮上できないでいるにも関わらず、フルで試合に出させ、そのほかは何も言わずに見守ることに徹しているとなると、そう簡単に踏み込んでいけるものじゃないことくらい、私にだってわかる。

そして、そのことで大地さんがとても苦しんでいることも。


「――あ、すみません、佐藤さん。すっかり話が逸れちゃいましたね。えーっと、じゃあ、まずは簡単な問診からいきましょう。ズバリ、フローズンアイは今日もキレッキレですか?」


気を取り直すように小さく肩を上下させながら息を吐き出し、面談のメインである体調を尋ねる。

佐藤さんはとても真面目でストイックだから、私からわざわざ聞かなくても自身で体調管理をばっちりしているだろうけれど、これも仕事なので、形式上尋ねなければならないのがなんだか申し訳ない。


「ふはっ。夏月さんの問診、やっぱ面白いですね。大丈夫です、今日もキレッキレです。てか、夏月さんは大地さんのことだけ考えてあげてください。俺やチームのみんなはプレーで鼓舞することでしか大地さんに発破をかけられませんけど、夏月さんは違いますよね? 夏月さんなら大丈夫ですよ。……きっと、全部大丈夫です」

「……佐藤さん」


そうでしょうか、という言葉を寸でのところで飲み込んで、控えめながら、それでも首を縦に振る。

それと同時に、さっきの私と同じ台詞を意図的に使うあたり、佐藤さんもなかなかにくい演出をするんだなと心の中で苦笑がもれる。
 
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