恋した責任、取ってください。
どうやら救護班の人や佐藤さんに付き添ってコートを離れた控えメンバーと入れ違いになってしまったようで、佐藤さんには黙って寝ていてもらわなきゃならないのに思うと、自分の足の遅さが悔やまれる。
……しかもここに来るまでにちょっと迷っちゃったし、私ってばなんでこうも安定してアホなんだろうか。
「試合は? 今、誰が出てます?」
「あ、佐藤さんが運ばれてからすぐに私も会場を出たので……。でも、黒井さんの名前が呼ばれてましたよ」
「そうですか……。なんか、申し訳ないことをしちゃいましたね。点差は詰められませんでしたけど、離されてはいませんでした。残り時間のことを考えても、あの場面はあそこまで無茶することもなかったのに……すっかりチームを動揺させてしまって、いったい俺、なにやってんですかね」
「……、……」
口元にふっと自嘲気味な微笑を浮かべながらベッドからゆっくりと起き上がる佐藤さんの肩に、近くにあったチームジャージを羽織らせながら、かける言葉を探す。
けれど何も思い浮かばなくて、結局、曖昧に笑うことしか私にはできなかった。
佐藤さんはそんな私に、大丈夫です、と軽く笑って、「ジャージ、ありがとうございます」と言いながら袖を通した。
それからふと私を見据えて、
「先週までの大地さんなら、いくら調子が悪くてもあんな初歩的なパスミスなんて絶対にしませんでした。夏月さんも見ててわかりましたよね? ……あの9番です、葛城さんは」
と、言う。
「葛城さんのほうは純粋にまた大地さんと対戦できて嬉しいって感じでプレーしてます。でも、大地さんは完全に自滅してます。あのパスのときも、大地さんにはしっかり葛城さんがマークについていたんですけど、大地さん、めっちゃ怯んだ顔してて。その瞬間、カッと頭に血が上って、気づいたら体が勝手に無茶なボールを取りに行っちゃってました」