恋した責任、取ってください。
 
そう言ってベッドの上から私を見上げて笑う佐藤さんに、それでも私はすぐには返事ができず、曖昧に首をかしげることしかできなかった。

大地さんのことが、とにかく心配だ。

チーム全体の気持ちを代弁してくれただろう佐藤さんの思いにも、できることなら一刻も早く応えたい。

でも、なっちゃんには関係ないよ、なんて言われて拒絶されたらと思うと、たまらなく怖い。

その気持ちへの打ち勝ち方が、今の私にはどうしてもわからなかった。


「……すみません、無理言って困らせちゃって。俺はもう大丈夫ですから、会場に戻ってください。昨日、弥生さんから、試合を観に行くって連絡をもらってるんです。心配させちゃってるでしょうから、早く戻ってあげてください」


きっと複雑な顔をしているだろう私を見た佐藤さんは、そう言って申し訳なさそうに微笑む。

そんな佐藤さんに、また曖昧に口角を持ち上げることしかできなかった私は、


「そうだったんですね。じゃあ、失礼します。お大事になさってください」


それしか言えずに救護室をあとにするしかなかった。





結局、ホーネットとの2戦目は佐藤さんの離脱のせいもあってその後のチーム全体が浮き足立ってしまい、大差をつけられての痛い連敗を期してしまった。

幸い、病院での精密検査の結果、佐藤さんはどこにも異常なく次の試合からはまたいつも通り出場できることになったけれど、なんとも後味の悪い結果に、ブルスタの空気はお世辞にもいいとは言えない状況になっている。


「お姉ちゃんは見てないから知らないだろうけど、第2クォーター直後、もじゃもじゃ頭の人が大地さんの肩をどついてたんだ。あれ、相当キレてたよ。チームの雰囲気、最悪じゃん。次の試合から佐藤さんが戻ったとしても、あんな雰囲気じゃ、正直、勝てる気がしないよ……」
 
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