恋した責任、取ってください。
 
これじゃあ、早く葛城さんのことを話してくださいと催促しているみたいじゃない……。

もちろんそういう気はないし、そのことは大地さんもわかってくれているみたいだけど、なんというか、たまらなく罪悪感だ。


「すみません……」と謝りながら、あまりの居心地の悪さに座布団の上で身を小さくする。

確かに私は大地さんから葛城さんの話を聞きにここに来た。

でもそれは、大地さんが話したいタイミングで話してくれたらいいことで、急かすようなことをしてはいけない。

あまりに気の回し方が下手すぎて、うつむいて細いため息を吐き出す。

膝の上で握った両手の拳が、心なしか少し震えていた。


「あはは。なっちゃんって、大胆なのか小心者なのか、いったいどっちが本物なの? なっちゃんが知らないのは当然でしょ? それを聞いてほしくて時間を作ってもらったんだから、なっちゃんはむしろ、もっとガンガン聞いてきていいんだよ」

「でも、こ――っ。……いえ、すみません、なんでも」


明るく笑い飛ばす大地さんにつられて上げた顔を、すぐに元に戻す。

〝殺しかけた〟なんて……。

思わず口に出しそうになって慌てて飲み込み、膝の上の手をじっと見つめながら奥歯に力を込める。

そんなことを言われたら、余計、どういう気持ちで大地さんの話を聞いたらいいかわからない。

わからないから怖くて。

受け止めきれるか自信がないから、きっと最後まで声に出せずに飲み込んでしまった。


「もしかしなくても、〝殺しかけた〟って言ったのが気になってる、よね?」

「……、……」

「……そうだよね。あんな言い方されたら、誰だって気になるに決まってる。でも、殺しかけたも同然なんだ。なっちゃんだから、聞いてほしい。ただ聞いてくれるだけでいいんだ」
 
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