恋した責任、取ってください。
沈黙を肯定の意味に捉えたらしい大地さんは、ふうと息を吐いてお猪口の日本酒をぐっと煽る。
コト、とお猪口を置いた音がして、それからまた一息ついて、いまだ顔を上げられない私に「でも」と言う。
「その前に、ご飯食べちゃって。さっきから店員さんが持っていきたそうな顔してるし、大将の視線もチラチラうるさくて。タイミングを計ってくれてるみたいだけど、このまま話しはじめると、せっかくの炊き込みご飯が冷めちゃうから」
ね? と促されて、こくりと頷く。
私があんまり思い詰めた空気を出していたからか、大将さんも店員さんも席に運ぶタイミングを計りかねていたようで、そろそろと顔を上げると、ほっとしたような顔で店員さんが「お待たせしました」と炊き込みご飯を運んできてくれた。
一人前の小さな土鍋からはふつふつと湯気が立ち上り、きのこと出汁のいい香りが席の周りを包む。
蓋を開けるとさらに濃い香りがして、思わず口元が緩んだ。
お吸い物、お新香、分厚い焼きホッケの切り身に、茶わん蒸し。
お吸い物と茶わん蒸しにもふんだんにきのこが使われていて、なるほど、これできのこづくしのセットだ。
「ご飯とホッケ、ちょっともらってもいい? なっちゃんの嬉しそうな顔といい匂いにつられて、なんか食べたくなってきちゃった」
「はい、もちろんです」
表情が華やいだ私を見て、大地さんがクスリと笑う。
今までの私の顔が相当ひどかったのだろう、その顔はほっとしている。
あらかじめふたりぶん用意されていたお茶碗とお皿にそれぞれ炊き込みご飯とホッケを半分よそい、いただきます、と手を合わせる。
それから、ちょこちょこと雑談を交えながら食事を終えて、熱いお茶で息をつく。
早々に食べ終わり、私が食べ終わるのを待っていた大地さんは、お盆を下げてもらう際に今度は冷酒を注文し、私には、また大将に向けて適当にソフトドリンクを注文した。