恋した責任、取ってください。
朝から胃腸薬を飲んだのに、出勤の準備を整え部屋を出るときにはすでに胃が痛かったし、すし詰め電車で出勤中も、徒歩で向かう会社までの道でも、私の胃は悲鳴を上げ続けていた。
大学進学を機に地元から私の部屋に転がり込んできた妹の弥生からすれば『お姉ちゃんは人にどう思われるかを怖がりすぎなんだよ』ということらしいけれど、その性質を作り出したのは紛れもない弥生なので何も言えない……。
私が一人暮らしをしていた大学時代の4年間で少しは克服できたと思っていたのに、弥生と一緒に住み始めてからというもの胃薬が手放せない生活が続いており、きっと私の胃は24歳にしてボロボロなんじゃないだろうかと思う。
ストレスで太るともいうけれど、私の場合は喜ぶべきなのか悲しむべきなのか痩せていく。
胃がボロボロ疑惑があるために食欲もあんまり湧かないし、お酒もたくさんは飲めないので酔っ払って憂さ晴らしもできない。
前向きに考えるより後ろ向きに考えるほうがすこぶる得意な私は、異動の辞令を受けてからの数週間で2キロ体重が落ちてしまった。
でも、根性は人並みにあるつもりだ。
やるとなったらやるしかない、泣き言も弱音も吐かずに仕事を頑張り、こんな私でも好きだと言ってくれる王子様が迎えに来てくれるその日まで、胃薬を飲んで頑張るしかない。
怖い先輩がいないことを祈りつつ、バスケットの教本をパラパラと捲りながらカーペット地の廊下を目的地までテクテクと進む。
私が働いている株式会社マザー・ファクトリーという会社は大手飲料メーカーの一つで、その中の『統括マネージメント部』は、社内のあらゆる部署の手助けをする課だという。
その部内においてさらに私が配属になるのは、会社のバスケチーム『BLUE STAR』通称『ブルスタ』のマネージメントやあらゆるサポートをする10人ほどのチームらしい。