恋した責任、取ってください。
試合は明日もあるので、お客さんが帰ったあと、ゴミや落とし物、乱れた椅子などの確認を軽く済ませて私たちスタッフ側も解散となる。
試合が終わって1時間もすれば「お疲れ様でしたー」「明日もよろしくお願いしますー」とあいさつをし合いながら、それぞれの帰路につくこととなった。
「ううっ、中はあんなに暑かったのに、やっぱり外は寒い……」
コートを着込み、マフラーもぐるぐる巻きにして完全防寒に徹したにも関わらず、一歩外に出てみれば、そのとたんブルリと背筋が震えた。
いつの間にか街はもう夕暮れ時で、道行く人たちもみな寒そうに肩を縮めて足早に通り過ぎていく。
ホームページの更新はこっちでしておくから、ということで私は直帰になったものの、どこかお店に入って温かい飲み物で温まらないと、体育館の熱気で思いがけず汗をかいた体では、このままだと風邪を引いてしまいそうだ。
「なっちゃん! なに帰ろうとしてんの、探したよ」
すると、もうひとつ身震いをしたところで背中から聞き馴染んだ声がかけられた。
振り返ると、そこにはチームジャージにベンチコートを羽織った大地さんがいて、言ったとおり走り回って私を探してくれていたのだろう、肩が少し上下していた。
「すみません、葛城さんと積もる話もあるんだろうなって思って……」
「それはもう済んでるよ。それに言ったでしょう、全部片付けたら一番になっちゃんに会いに行くって」
「はい、そうなんですけど……」
言い淀むと、大地さんの片眉がピクリと持ち上がった。
うう、これ、大地さんが面白くないときによくやる癖だよ……。
でもだって、これから返事をもらうんだもの、風邪を引きそうだと思ったのも本当だけど、心の準備くらい、ゆっくりさせてもらいたいというのが、告白をしたことのある人ならきっとわかってくれるだろう至極真っ当な心理なんじゃないだろうか。