恋した責任、取ってください。
「とりあえず、近くのカフェで待ってて。それとも、外で少し待つことになるけど、一緒に帰る? 俺の部屋」
「は……えっ!? いや、カフェでお願いします! めちゃくちゃホットココア飲みたかったんです!」
「ぶほぉっ」
温厚な人なのに珍しく怒らせてしまった……と落ち込んでいれば、一緒に部屋に帰ろうなんて言われてとっさに思いっきり拒否してしまい、一瞬面食らった顔をされたあと、盛大に吹き出されてしまった。
ああもう、なんて私はバカなんだ。
けれど、もう言ってしまったものは取り消せるはずもなく、あまりの恥ずかしさに顔をうつむかせるのみだ。
「じゃあ、それ飲みながら待っててよ。連絡事項とかまだあるから、飲み終わった頃には行けると思う」
すると大地さんは、そう言って私の頭をひと撫でする。
それから「それじゃあ、またあとで」と言い残すと、ベンチコートを翻し、駆け足で体育館の中へ戻っていった。
そうして、言われたとおり近くのカフェへ入り、ホットココアも飲み終わった頃。
緊張度合もいい加減高まりきり、一周回って妙に落ち着き払った心境で待っていると、窓際のカウンター席に座っている私の目の前にニコニコと笑いながら手を振る大地さんの姿が唐突に飛び込んできた。
待っているときと違い、実物を目にするとまた緊張がぶり返す私をガラス窓一枚隔てた向こうからまた笑う大地さんは、急いで店から出てきた私を「本当にこのまま部屋に連れて帰るけど、いい?」なんて、本気とも冗談ともわからない口調でからかう。
「いや、本当に。実はこの辺、俺の部屋からもわりと近いんだよね。どこで話をしようか悩んだんだけど、なっちゃんもふたりきりのほうが落ち着くかと思って」
「そ、それも……そうですね」
「じゃあ、本当に行っちゃおうか。いいよ、なっちゃんなら。すごく歓迎する」
「……はい。では、そう……します」