恋した責任、取ってください。
「ここだよ。あんまり綺麗じゃないかもしれないけど、遠慮せず入って」
「……は、はい。……失礼します」
ドアを引いて先に私を中に通してくれたのは、エレベーターを降りて右に進んだ【606】のプレートが掛かっている部屋だった。
初めて男の人の部屋に来ただけあって、さすがに玄関先で固まる私の横からすっと長い手が伸び、「ごめん、暗くて動けないよね」とパチリと電気が点けられる。
そのまま大地さんは背後でゴソゴソと靴を脱ぎ、私の横を通って部屋の電気を点けに中に入っていく。
「ん? どうしたの?」
「いや、あ、あの……」
「大丈夫だよ。取って食ったりしないから」
「……はうぁっ!?」
部屋が明るくなったところで振り返った大地さんは、玄関から一歩も動けない私に爽やかな顔でとんでもないことを言い、初めて尽くしの私をものすごい緊張感の中へと引きずり込む。
けれど、挙げ句に奇妙な声を発してしまった私を呆れるでも笑うでもなく、ただ優しく手を引いてゆっくりと中に招き入れてくれる大地さんの手は、驚いたことに微かに震えていて、その瞬間、私の体から緊張による震えがすっと引いていった。
そっか、大地さんだって緊張しているんだ。
いつもと様子が違って見えたのも、言葉少なだったのも、これから私にどんな返事をするか、頭の中でずっと繰り返していたからなのかもしれない。
三度目の告白から1か月半、答えはもう出ているはずだもの。
「……なっちゃん。お茶とか出す前に、まずは先に返事をさせてもらってもいい?」
1DKの部屋の中央、ちょうどガラス製のテーブルと壁際にソファーが置かれているところまで私を招くと、大地さんがひどく真剣な目をしてそう尋ねてきた。
それに一度、躊躇いがちに首を縦に振ると、いよいよ大地さんが口を開く。