恋した責任、取ってください。
 
「三度も気持ちを伝えてくれて、その上、こっちの都合で散々待たせてごめんね。それと、本当にありがとう。――もし前と気持ちが変わってないなら、なっちゃんと真剣に付き合わせてほしい」

「……え?」

「こんな俺には、なっちゃんはもったいなさすぎるくらい、いい子でさ。だから、俺じゃない人と付き合うほうが、なっちゃんにはいいのかもしれないって、ずいぶん悩んだんだけど。……でも、まだ遅くはないなら、なっちゃんも俺と真剣に付き合う覚悟を決めてほしい」

「……、……」


見上げる先――40センチ高い位置から、大地さんの揺れる瞳が私だけを見つめている。

さっきまでほどほどに遠かった距離はいつの間にか縮まっていて、バクバクとうるさく鳴る心臓の音が大地さんに聞こえてしまいそうだった。

思考が止まってるのに、頭の中が空っぽで、少しも声が出せないのに。

……ああ、どうしようもなく涙が込み上げてくるのは、どうしてなんだろう。

見上げたままでいると、大地さんが再び口を開く。


「俺のプロフィール、なっちゃんなら知ってるでしょう? あそこに書いてある『好きなものは小さいものとメガネ』っていうの、本当なんだよ。あと、前に『ちっちゃくてメガネの女の子なんて、マジでドストライク』って言ったこともあったでしょ。あれも本当。ソウがなっちゃんにアプローチをかけてるのを見たら当たり前に嫉妬したし、でも、『なっちゃんだけには、そういう目で見られたくない』って言ったのは、葛城とのことをずっと引きずったままだったから、俺なんかを好きになってもなっちゃんが損するだけだって。……そういうつもりだった」


矛盾ばっかでほんと情けないよ、と大地さんはため息混じりに吐き出し、微かに笑う。
 
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