恋した責任、取ってください。
「――なっちゃん、大好きだよ」
*
それから私たちは、初めてキスをして、お互いがここにいることを確かめ合うようにして抱き合いながら、ひとつのベッドで眠った。
大地さんが外に食事に出ようと誘ってくれたけれど、胸がいっぱいで喉を通らなさそうだと思った私は、冷蔵庫の中身とキッチンを借りてご飯を作り、それをふたりで食べた。
冷蔵庫の扉には、前に私が配った〝アスリート向け一人男子の超絶簡単フライパンレシピ〟の紙がマグネットで丁寧に貼られていて、ところどころに水がこぼれたあとや油はねのあとがあり、作ってくれていたんだなと胸がキュンとなった。
食事の量は大地さんには物足りないかなと思ったけれど、胸がいっぱいなのは大地さんも同じだったようで。
「なっちゃんが作ってくれたご飯が食べられるなんて、俺、もうどうしたらいいかわかんない……」と。
一口食べるごとにそんなオーバーなことを言って、「これからはいつだって作りますから」と私を笑わせた。
そうして迎えた朝は、見るもの、感じるものすべてがキラキラと輝いていて、まるで生まれ変わったような気分だった。
目が覚めたら、隣が温かい。
一番に好きな人の顔が見られる、声が聞ける、その存在を感じられる。
そんな泣きたくなるような幸せが、じんわりと胸の中に込み上げてくる。
またキッチンを借りて朝食を作り、今日も試合がある大地さんに「勝ってくださいね」と食事を出せば、会場の準備がある私は、一足早く出勤だ。
部屋に寄って服を着替えたいし、弥生ともんちゃんの顔を見ないことには、なんだか落ち着かない。
「なっちゃん、忘れもの」
じゃあ、行きますね、とドアノブに手をかけた私を、大地さんが呼び止める。
振り向くと同時に額に降ってきたのは、昨夜重ねた唇だった。