恋した責任、取ってください。
 
「……はぇっ!?」と奇妙な声を出す私に大地さんは不敵に笑うと、ノブにかけたまま固まる私の手に自分のそれを重ねて。


「クリスマスになっちゃんの全部をもらおうと思うんだけど、いい? それとも、2週間じゃまだ覚悟足りない?」


触れそうなくらいに耳に唇を近づけ、そう、ひどく甘く囁く。

意味がわかって瞬時に顔をうつむかせたまま、それでもコクコクと頷いて返事をすれば、大地さんの腕が背中から回り、その大きな体にすっぽりと抱きすくめられる。


「……大事にする」

「はい」


怖くはない。だって、心から好きな人だから。

もし、ひとつ怖いことがあるとすれば、この1か月半、弥生からしつこいくらいに打診され続けてきた弥生印の〝お見立て〟とやらだ。

今まではどうにか仕事が忙しいことを理由に逃げ続けてきたけれど、これを知ったら弥生のハートに火がつくこと必至だろう。

でも、一生に一度のことだもの、こういうときくらい弥生の好きなように見立ててもらうのも、いいかもしれない。


「あの、弥生が――あ、妹なんですけど、いろいろと見立ててくれるって言ってくれてるので、たぶんそんなにおかしなことにはならないかと……」

「ぶははっ。俺、なっちゃんならなんでも興奮するんだけどな。ていうか、自分でハードル上げてどうするの。でも、いろいろ想像しながら待ってるよ。妹さんによろしくって伝えておいてくれる?」

「うう……はい」


けれど、ただの業務連絡的な意味合いで報告したつもりが、とんだ結果を招いてしまい、もう恥ずかしすぎて顔を上げられなくなってしまった。

観念して返事をしてみたものの、果たして大地さんに満足していただけるものを提供できるのかどうか……正直なところ、果てしなく不安だ。
 
< 211 / 217 >

この作品をシェア

pagetop