恋した責任、取ってください。
フローズンアイと公式プロフィールにまで載っている切れ長の瞳が、外灯の薄ぼんやりとした灯りの中で不安げに揺らめいている。
いや、そんな目をされるほど大したことじゃないんですけどね……と申し訳なく思いながら、もんちゃんを指しておずおずと口を開く。
「えと、その子、チワ左右衛門って名前です」
「え?」
もん三郎も可愛いけど、チワ左右衛門です。
当時、なぜか時代劇にハマっていた妹の弥生が付けた名前で、私が付けたんじゃありません。
私はベガって付けたかったんです。
ベガはこと座の一部で、日本では織り姫星と呼ばれる一等星、本当はオスに付ける名前じゃないんだろうけど、とにかく私はベガがよかったんです!と続けて必死に訴える。
この際、チワ左右衛門なんて江戸の町人っぽい名前を付けたのが私じゃないと伝わればいい。
すると。
「ぶはっ!チワ左右衛門て!説明必死すぎ!」
目を丸くして聞いていた佐藤さんが、とうとうお腹を抱えて大声で笑いだしてしまった。
ぎょっとしたもんちゃんが私の膝に避難する。
で、ですよねー……。
「ハハ、ハハハ」
私はもう、渇いた笑い声しか出ない。
でも、今まで誰かに愛犬を紹介したこともなかったし、私が付けたかった名前のことも話す機会がなかったから、言いたかったのだ。
本当はベガ推しだった、と。
「やばい、夏月さん面白すぎっ!」
「……ありがとう、ございます?」
「ぶはっ!」
笑わないでくださいよ佐藤さん、どういう返事が正解なのか分からないんですから……。
それから佐藤さんは、チワ左右衛門と、自分で勝手に付けたもん三郎と、私の必死すぎた説明に泣くほど爆笑し、しばらく苦しそうだった。
水を飲んでやっと落ち着くと、笑いすぎて疲れたのか、よろよろと立ち上がって言う。
「送ります」