恋した責任、取ってください。
 
「……、……」

「……」


しーん。

無言の時間がやたらと長く感じて、ちょっと胃がやばいなあ、と無意識にお腹をさする。

そういえば大地さん、胃は温めるといいって言って私のお腹に自分の手を当ててくれたんだっけ、その効果が切れてきたんだろうか。

さっき食べた晩ご飯も上手く消化になっていないような気がして、さすさすしてしまう。


「あの、」

「はははいっ!?」


そんなとき、佐藤さんにいきなり話しかけられるもんだから全身で小さく跳ね上がる。

見上げると、過剰反応の私に佐藤さんは頭上から「ふはっ」と笑い声を漏らし、次いで「すみません」と謝ってから、改めて口を開いた。


「大地さんが引退しようとしてること、もしかして夏月さん、知ってます? さっきから見てると、ずっと聞きたそうな顔してるんで」


切れ長の目を細めて、そう言う。

う……。

フローズンアイは千里眼なんだろうか、考えていることまで見透かされていて恥ずかしい。

でも、このタイミングで聞かないと機会を逃してしまうかもしれないと思って、胃の辺りをぐっと押さえると経緯を話してみることにした。


「あ、はい。今朝、チーム・ブルスタに向かう途中の廊下で大地さんにぶつかってしまって。そのときに成り行きで知った感じです」

「恵麻さん、追いかけてきたでしょ?」

「そう!そうなんです!そのまま口論みたいになっちゃって。でも、長身同士が話す姿はどんな内容でも絵になるなあって見とれました」


佐藤さんすごい、自分が見たわけじゃないのになんでそんなに事細かに分かるの? フローズンアイにはそんな能力もあるのだろうか。

なんて思っていると。


「あの2人、双子だから。二卵性双生児って言うんですかね。顔も性格も違うけど、恵麻さんがお姉さんで大地さんが弟なんですよ」


と、佐藤さん。
 
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