恋した責任、取ってください。
ほっと胸を撫で下ろしていると、けれど頭上で「え?」と佐藤さんが小さく声を漏らした。
何か変なことを言ったのだろうかとドキリとして佐藤さんを見上げれば、その佐藤さんは口元を手で覆って視線を明後日の方向に向けている。
え、なんで? 感想言うとこそこじゃない!?
「あの……?」
ドキドキしつつ佐藤さんを窺う。
すると彼は、はっと弾かれるようにして私を見下ろし、小さく握り拳を作ると笑って言う。
「いえ、なんでも。それで話を戻すと、俺は夏月さんの力も借りて大地さんをなんとかヘタレじゃなくしたいんです。あの人、ほんとセンスあるから、見ててもったいないんです」
「わ、私は力なんて何も!」
「そうですか?」
「トラベリングをパドリングと間違ったり、プロセスをパロセスって言っちゃったり、日本語が残念な私に一体何ができましょうか!」
佐藤さんが普通に「夏月さんの力も借りて」なんて言ってくるものだから、急に恥ずかしくなって私も握り拳を作って力説してしまう。
そりゃ大地さんの力になれることをしたい気持ちは山々だけど、佐藤さんが言うほどの力が私にあるとは、なかなかどうして思えない。
これから頑張るのみだ。
と。
「パ、パドリング……っ!」
佐藤さんが悶える。
再びぎょっとしたもんちゃんが彼に唸った。
それはそれとして、うーん、なんかこう……俺ちょっと傷つきました、みたいな感じのさっきの「え?」って何だったんだろう。
パドリングに悶えている今の佐藤さんからは別段そんな空気は感じないけど、やっぱり変わったことを言っちゃったからなんだろうか。
日本語が残念なだけに。
「あ、でも、プロの佐藤さんから見ても大地さんってすごいんですね!それなら恵麻さんが止める理由もよく分かります!」
「夏月さんが止めたら、けっこう効果あるかもしれません。夏月さん小さいしメガネだし」