恋した責任、取ってください。
佐藤さんが落ち着くのを待って言うと、またまた彼は猛烈に返事に困ることを言ってくる。
確かにプロフィールに『好きなものは小さいものとメガネ』って載っていたけど、それはそれぞれ単体で好きなんじゃないだろうか。
大地さん本人からも『ちっちゃくてメガネの女の子なんて、マジで俺、ドストライクだわ』とは言われたものの、きっと私の緊張を和らげようとしてくれての発言だったのだと思う。
私は大地さんのこと完全に好きだけども!
というわけで、私に止められて引退をやめるなんてことがあるんだろうかと、佐藤さんを疑う気持ちのほうが大きくなるのは否めない。
すると。
「俺は小さい女の子のメガネは最強だと思います!あ、小さいっていうのは子供って意味じゃなくて身長がスモールサイズって意味です!」
と、佐藤さんが元気付けてくれた。
じーん。佐藤さん、めっちゃいい人……!
何もそんなに顔を赤くして元気付けてくれなくてもよかったんだけど、素直に嬉しい。
ちょうど外灯の真下を通るタイミングに重なったから、佐藤さんの表情がよく見えたのだ。
「コンプレックスだから嬉しいです」
「えっ!? そ、そうですか!?」
「はい」
笑って見上げれば、佐藤さんは自身の長い腕で目元を隠し、もごもごと「だ、だから一緒に大地さんの引退を阻止しましょう」と言う。
なんだろう、外灯の光がメガネに反射して眩しかったんだろうか、意気込んだ声で「そうですね!」と返事をしながら若干申し訳なくなる。
それから佐藤さんは目元を隠したまま無言に戻ってしまい、世間話のネタなど一つも持っていない私は、私たちの少し先をテクテク歩くもんちゃんのプリティーなお尻を眺めて歩く。
「ここです。ありがとうございました」
「……あ、いえ。じゃあ、また明日」
数分後、マンション前に着き、ペコリと頭を下げてお礼を言うと、佐藤さんはそれだけ言い残してさっさと走って行ってしまった。