恋した責任、取ってください。
「せめてウズラ顔じゃなかったらなあ……」
2人の女子然としたお綺麗な顔を思い浮かべると自然とメガネが装着された自分の顔面にヘコんでしまい、溜め息が出てしまった。
けれど持って生まれたものは今更どうしようもないため、体育館用に新調したスポーツシューズとジャージを持ってエレベーターで地下まで下り、お手洗いで着替えてから体育館に入る。
初日は何の準備も出来ていなくて、メンバーを紹介してもらったあとで大地さんのお古のバッシュを借りて履いたけど、今はもう自分の足のサイズぴったりのシューズだから、歩くたびに躓いたり無駄にコケたりしなくなった。
大地さんは29cmらしいのだ、どうりで脱げる。
それはそれとして、今日も体育館には一番乗りで大地さんの姿があり、それだけで安心する。
復帰する選手と戦いたくないから引退までしようとしているなんて嘘のようで、ゴール下で、佐藤さんの思い過ごしなんじゃないかとさえ思ってしまうような見事なダンクを決め、手応えがあったのか「おっしゃあ!」と嬉しそうだ。
やっぱり大地さん、素敵だなあ……。
みんなそれぞれ格好いいけど大地さんがダントツで格好いいし、ダンクは迫力も凄いから、きっとそれだけで目を引くものがあるんだろう。
佐藤さんのスリーも、高浜さんの弾丸ドリブルも、ザキさんの華麗なパス回しも、ルイネエの相手を吹っ飛ばすかのごとき切り込みも、もちろん格好いいし凄いと思う。
けど、大地さんが一番だ。
すると。
「お。なっちゃん、今日も早いね」
「お疲れさまです!」
床に転がっているボールを拾うために屈んだ大地さんが私に気づき、ニコニコと笑った。
すでにしっとりと汗をかいている大地さんからは妙に艶めかしい色気が発せられていて、笑いかけられただけで昇天しそうになる。