恋した責任、取ってください。
 
格好よすぎて困る……!とっても!

大地さんを手伝ってボールを拾う手にじっとりとした汗が吹き出て、心臓の鼓動も早くなる。

視界の端に大地さんが写り込むだけで形容しがたい感覚に襲われ、体がじーんと痺れた。


夜のもんちゃんの散歩の時間が佐藤さんのランニングの時間と重なっていることもあって、ご近所さんだと知り誤解が解けたあれ以来、よく児童公園で休憩したりするけど、そのときは未だに緊張するのに対し、大地さんには緊張プラスときめきがあって、そこがやっぱり違う。

全部が格好よく見えるなんていう感覚は大地さんに対してが初めてだけど、これが恋なんだってはっきり断言できるくらいに、私の中でのときめき指数は着実に確実に日々膨らんでいる。


「ありがとね、なっちゃん。ボール、このネットカゴに入れてくれたらいいから」

「はい!ありがとうございます」


頑張って持っても4つが限界の私は、大地さんがカラカラとローラー音を響かせて近くまで押してきてくれたカゴに、UFOキャッチャーの要領で腕を広げてボールを落とした。

ガコガコと太い音を立ててボールがカゴに収まり、それを確認すると、大地さんはそこから早速1つを取り上げ人差し指の先端で回す。

漫画やアニメでよく見る、あの高速クルクルだ。

前のめりでおおぉ!と見とれていると、大地さんは得意げにボールに回転を加えてドヤ顔で見下ろしてきて、ますます格好いい。

と。


「ところでなっちゃん」

「へっ?」


急に大地さんに呼ばれて間抜けな声が出る。

大地さんは呆けたウズラ顔の私にニパッと破顔しながらボールに回転を加え続け、唐突に「引退の話だけど」と、今までの3週間聞くに聞けずにいた案件をサラリと口にした。


「気になってるだろうから言っておくと、今シーズンは新センターが間に合いそうにないからこのまま現役を続けようと思ってる」

「ほ、ほんとですか!?」
 
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