恋した責任、取ってください。
「はっ!? もしかして大地さん、私をおぶったせいで腰を痛めちゃったとかですか!? 私ってばなんてことを! どうしよう~~……」
少しの間、珍しいこともあるもんだな〜と呑気に思っていたけど、大地さんが今ここにいない理由として考えられることといったら、体調不良=私のせいとしか考えられず、頭を抱える。
腰骨の辺りにボールをあてがい、片手でそれを持っている佐藤さんにあたふたしながら「よ、様態は……」訊ねると、しかし彼はふっと笑うと空いているほうの手で私の後ろを指さした。
佐藤さんの指を追って振り返ると、そこには、鍛え上げられた筋肉が確実に鼻血モノの上半身裸の大地さんが、今まさに素肌にTシャツを着ようとしながらこちらに歩いてくる姿が。
ああぁぁ、クラクラしちゃう……。
「昨日はあの後、俺の部屋に泊まっていったんです、あの人。飲み足りないとかで一人でずっと飲んでました。つき合いきれなくて俺は寝ましたけどね。だから今日も元気ですよ」
「そ、そうだったんですね……」
あんまり見ていたら本当に鼻血が出てきそうなので、後ろ髪を引かれつつも佐藤さんのほうを向いて安堵のため息とともに相槌を打つ。
あ、でも、佐藤さんの部屋に泊まったっていうことは、要は私をおぶったから大地さんは自分の家に帰れなくなったわけで……回りまわって、やっぱり申し訳ない気持ちになる。
と。
ずーんと落ち込んでいる私の頭にポンと手が乗せられ、次いで「それ、もしかしてケーキ!?」と子供みたいに弾んだ大地さんの声がした。
「あ、そうなんです。昨日、たくさんご迷惑をかけたお詫びにと思ったんですけど、甘いものが苦手な方もいるかもしれないのに考えなしにケーキって、とんだ空回り野郎ですよね」
「いや、迷惑なんてかけられた覚えないし、なっちゃん軽かったし、ソウもいてくれたから。ご近所さんなんだってね。ソウのナビのおかげで迷わないで送れたから全然平気だよ」