恋した責任、取ってください。
 
ということは、弥生の言うところの純情な反応を見せている佐藤さんは、昨日の歓迎会ではセーブして飲んでたということらしい。

場数を踏むと自分の中のストッパーがどの程度飲むと外れるか分かってくる、というところだろうか、とにかく、お酒で失敗したことがある人が身近にいて失礼ながらホッとした私だ。


一瞬、大地さんは酔ったらどうなるんですか?と口を開きかけたけど、今朝の恵麻さんの言葉を思い出して、早々にそれを飲み下した。

--『アイツ、ザルだから』

ザルなら、飲んだところで何も変わらない。

うーん、ちょっと残念。

なんて思っていると。


「あっ、そこのザキ!一人一個だろーが!」

「げっ!」


2つ目に手を伸ばしていたザキさんを目ざとく見つけた大地さんは、ビシッと人差し指を突き出して彼をロックオンし、いまだ箱の周りに群がっている選手たちの輪に入っていった。

「げっ!」と素直に感情を声に出したザキさんは、大地さんにケーキを取り上げられてもなお物欲そうにそれを見つめていて、そんな2人の様子に自然と私の口から笑い声が漏れる。


「みんなバカでアホでしょ。すっかりケーキに興奮しちゃって、ほんとガキなんです」

「なんか、男子高校生って感じしますね」

「あ、その感じ、懐かしいです」


さしずめ生徒会長のような雰囲気を醸し出している隣の佐藤さんは、輪に加わることなく淡々とケーキを食べているものの、一見すると冷ややかに見えるフローズンアイは優しげに細められていて、チームや一緒にプレーする大地さんたちに深い愛情を持っていることがよく分かる。

だからさっき、大地さんが酔っ払った自分のことを話しても止めなかったわけだけど--あ、知られたくないことだったんじゃ……。


「佐藤さん。酔うと可愛く甘えるっていう、さっきの話なんですけど……」

「いいんです!俺は夏月さんに知られて恥ずかしいことなんて一つもありませんから!」
 
< 55 / 217 >

この作品をシェア

pagetop