恋した責任、取ってください。
「……今の、何かの儀式?」
一人、そう納得していると、アルミや透明フィルムを丁寧に洗いながら分別していた大地さんが、呆気に取られた様子で呟いた。
ロッカールームには小さな洗面台が2台あり、大地さんは私から見て奥側の1台を使って作業をしているけど、元々が小さい洗面台の上に大地さんの大きな体だ、余計小さく見えてしまって、なんだかおもちゃに見えてくる。
って、そうじゃない。
「あ!それくらい私が……!」
「ご馳走してもらったお礼だから」
「じゃあ、私もお手伝いします」
「ん。じゃあ、お願い」
大地さんから、ケーキのクリームやスポンジ生地のカケラが付いているそれらの半分を半ば強引に分けてもらい、蛇口を捻る。
洗いながら、ついでに首も捻る。
大地さんも言っていたし、私も思ったけど、しかしさっきの頭ポンポンの応酬って……。
もしかして、悪ふざけ的なニュアンス?
なんて思っていると。
「あれかな、なっちゃんって妹要素が強いからみんな構いたくなるのかな。メガネだし小さいし、その上いつも一生懸命に仕事してくれるでしょう。そりゃ誰だって構いたくなるよね」
「……い、妹!?」
「あれ、失礼だった?」
大地さんがサラリと爆弾を落とした。
そんなふうに言われたの、生まれて初めてだ。
私は、弥生が生まれてからはずっとお姉ちゃんで、妹といえば、やけに要領がよくて外交的で明るく、おねだりが上手で姉を手のひらで転がし、でも人一倍寂しがり屋な面もあって結局はすごく可愛いウチの妹しか思い浮かばない。
私はそんな弥生とは正反対の性格で、酔った勢いじゃないと、好きな人に彼女がいるかどうかさえ聞くこともできない小心者なのだ。
そんな私に妹要素が?
「なっちゃん?」
「あ、いえ。失礼なんかじゃ、全然……」