恋した責任、取ってください。
 
佐藤さんもさすがに怒るよ、だってブルスタの守護神の大地さんにケーキの後始末をさせちゃってるんだもん、自分でやれよって話だよ……。

こういうところが残念なのだ、私は。はあ。

そうして、周りの迷惑も考えずに大地さんとのほほんと会話をしていた自分を猛烈に反省しつつ身を竦めていると、佐藤さんは言う。


「夏月さんは、ゆっくりでいいですよ」

「……へ?」

「ゆっくり来てください」

「?」


……あ、あの、意味が不明なんですけども。

けれど、どういう意味ですか?と佐藤さんに聞く間もなく彼らはすでにロッカールームを後にしようとしていて、私の質問は空を切る。

ゆっくり来てくださいと言われても、もうほとんど後始末は終わっていて、あとはプラゴミと紙ゴミに大まかに分けてゴミ箱にペイッと捨てたらいいだけなので、ゆっくりどころか、一緒に体育館に行ってもいいくらいだ。


「佐藤さんったら、変なの……」


私に向けられた佐藤さんの目は普段通りの怖さのないものだったものの、まるで大地さんと私が同じ空間にいることを阻止しに来たような行動の意味がよく分からず、遠ざかっていく2人分の足音を聞きながら独りごちる。

いいじゃないですか、一緒にいても。

私の好きな人なんだから。





その日の佐藤さんは、キレッキレだった。

打つシュート、打つシュート、見事にスリーポイントが決まり、いつも以上に気迫がみなぎっているようで、フローズンアイも冴えわたる。

佐藤さんのその目は、底冷えするような冷たさから対峙した相手を一瞬怯ませる効果があるらしく、紅白戦をしている最中のド迫力な眼力に気圧された相手チームの皆さんは、普段仲良しなザキさんでさえ、対峙した瞬間に「おまっ、超こえーよ!」と縮み上がらせたほどだ。

ちなみに、このときの佐藤さんとザキさんは、敵味方に分かれて紅白戦をしていたのだ。
 
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