恋した責任、取ってください。
けれど、それと同時に、佐藤さんってほんっと生徒会長キャラだよなあと妙に納得した。
気配り上手というか、励まし上手というか。
私も一時の恥なんて気にせず前を向こうと思えるし、元々が初めての恋なんだから失敗を恐れず大地さんを想おうという気持ちが触発される。
「佐藤さん、いい人……」
ザキさんに肩を抱かれ、2人連れ立って体育館をあとにしていく後ろ姿がやけに眩しかった。
帰りの電車の車内。
申し合わせたように疲れた顔で電車に揺られるサラリーマンやOLを視界に入れつつ、私も出入り口付近の手すりに掴まりながら同じような顔を窓にぼんやり映していると、ふと思った。
私に怒ったんじゃないということは、佐藤さんは必然的に大地さんに怒っていたわけだけど、大地さんと私が同じ空間にいることを阻止しに来たような行動に見えたその真意は、はて?
「ふあ~あ、やばい、眠気が……」
けれど、今日の仕事が終わって気が抜けたのだろう、歓迎会や今朝の慌ただしい出勤の疲れが今頃になって怒濤のように押し寄せてきて、私の思考能力をどんどん奪っていく。
さながら潮の流れにたゆたう海藻のように心地いい揺れに身を任せながら思うのは、佐藤さんって時々不思議なことをするよねくらいだ。
部屋に着くと、どういう風の吹き回しか、弥生が晩ご飯を作って待っていてくれ、もんちゃんの散歩も今日は代わってくれると言う。
その言葉に素直に甘えることにした私は、弥生の手料理なんていつぶりだろう……と感慨深くそれを食べ、こっくりこっくりしながらも気合いでシャワーを浴びて早々にベッドに潜った。
散歩に出かけた気配も、帰ってきた気配にも気づかず朝になっていたところを見ると、どうやら私は泥のように眠っていたらしい。
翌週の金曜日。
チーム・ブルスタのほうで開かれた私の歓迎会では、記憶をなくすことなく楽しく飲めて、ホッと胸を撫で下ろした私だったのだった。