恋した責任、取ってください。
 
ああ、恵麻さんの笑顔を見たら急に本物の大地さんにお目にかかりたくなってしまった……。

しばらく会っていないから大地さん欠乏症だ。


御用聞きが終わり、恵麻さんの下で働くようになると、自然と体育館には向かわなくなり、かれこれ2週間は大地さんの顔を拝めていない。

御用聞きはいわゆる、新しくサポートチームに配属になった人の新人研修だったらしい。

プロフィールや実績というデータから選手を知っていくのではなく、実際に体育館に出向いて交流し親睦を深めることで、データ以外の面も知り、サポート業務に役立ててもらおうというチーム・ブルスタの方針なのだそうだ。

初日こそ、私もプロフィール用紙とバスケの教本を持って行ったわけだけど、それはすぐに頭でっかちな考え方だったと改めさせられた。


「それにしても、大地にはハマちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだわ。同い年なのになんでああも違うのか。分っかんないわ」

「高浜さんも恵麻さんも、ご結婚なさってますもんね。でもまだ今年で28歳ですし、あっけらかんとしててもプレーオフのことだって大地さんなりに考えているんじゃないでしょうか」

「だといいんだけど」


あの子も困ったものよね、と言うように眉を下げて、恵麻さんはちびりとビールを口に含む。

大地さん、恵麻さん、ハマちゃんこと高浜さんは同い年で、ブルスタ創設当初から苦楽を共にしてきた、いわば戦友のようなものだ。

創設時からコーチを務めて下さっている御手洗頼人コーチと縁あって恵麻さんは結婚し、高浜さんは、前に教えてもらったようにアメリカ人の奥さんとの間に小さい子どもが2人いる。

そういう事実だけを見てみると、確かに恵麻さんが言うことも分からなくもないけど、体育館に一番乗りで来ていたバスケバカな感じが可愛い大地さんが、チームが強くなるためのことを何も考えていないなんて、私には思えない。
 
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