恋した責任、取ってください。
「いえいえ、そんな、違いますっ!機嫌が悪いわけないじゃないですか。ただちょっと考え事っていうか、なんていうか……あ!」
「え、考え事? てか今、あ!って」
「いや、あの、その……」
しまったぁ!という思いで手元のペットボトルに目を落とし、ドクンドクンと脈打ち始めた心臓を肌の奥で感じながら仕方なく小さく頷く。
全身が心臓になったようだとよく表現するけど、私は今まさにそれをひしひしと感じている。
大地さんの“色々”と、恵麻さんが意味深に焚き付けていった“例のアレ”について悶々と考えていたために不機嫌だと思わせてしまったわけだけど、適当に誤魔化してしまえばいいのに、つい今しがたの真剣な目のせいで、言うなら今だとなんだか勝手にプレッシャーなのだ。
「ああ、また恵麻の“例のアレ”でしょ? だからそれは言いたくなったらでいいって言ったじゃん。気になるけど、気長に待つよ」
当然、私の心の内がそうなっていることを知らない大地さんは、自分の勘違いだと分かってホッとしたのか、のほほんとした口調で言う。
これでこそ大地さんだ。
でも、気長に待たれても……!
そののほほん度合いに逆に言わなきゃと俄然プレッシャーがかかってくるのはなぜだろうか。
自分で自分がよく分からない。
と。
「そういえば、もうすぐ恒例の植樹イベだね。今年はソウがいつになく張り切ってて、ここ最近、ずっと楽しそうだよ。皆もなっちゃんにすっげー会いたがってるけど、一番はやっぱりソウかな。楽しいイベントになるといいよね」
なぜか大地さんまで佐藤さんの名前を口にした。
恵麻さんに続いて、どうして大地さんまで……。
一つ違うのは、恵麻さんのときは単にザキさんとセットだから離さないであげてと思ったのに対して、大地さんの口から聞くと、どうしてか無性に虚しい気持ちになったことだ。