恋した責任、取ってください。
「……そんなに楽しみに? 佐藤さんが?」
「うん。フローズンアイもキレッキレ」
そう言って大地さんは指で自分の目を吊り上げ、フローズンアイの真似をして屈託なく笑う。
じゃあ大地さんは? 楽しみですか?
私は久しぶりに大地さんに会えるのを指折り数えて待っていて、今日フライングで会えたことだって奇跡だと思っていたんだけど、無邪気に佐藤さんの話をされてもリアクションに困る。
もちろんそれは、私が気持ちを伝えていないことと、残念ながら大地さんには私がちゃんと“女の子”に見えていないからなんだけど、だったらなんで切なそうに『いつかどっかに飛んでいきそう』なんて言ったんですかというモヤモヤした思いが胸に広がって、どうしようもない。
「そうだ、番号教えてよ」
「え?」
「ソウにも教えておくから、また恵麻に誘われたらソウを呼んであげて。ご近所さんだし、俺だっていつも迎えに行けるわけじゃないから」
すると追い討ちをかけるように大地さんが言う。
ああ、この人は私のことなんて妹くらいにしか見えていなくて、自分が恋愛対象になっているなんて少しも思っていないんだな……。
現実を突きつけられて、目の前がぼやける。
私が大地さんの恋愛対象にならないことは分かっていたつもりだったし、それならそれで頑張るしかないとも思ってきたけど、今のでなんだか、当たってもいないのに砕けた気分だ。
「スマホ貸してくれる? 登録するから」
「……はい」
でも、気持ちとは裏腹に体が勝手にバッグに手を伸ばしてスマホを取り出すんだから、そんな自分にとことん呆れてしまう。
全く脈ナシなのにそれでもまだ大地さんとの繋がりが欲しいなんて、どうかしているのかな。
大地さんは、私の手からするりとスマホを抜き取ると慣れた手つきで操作し、少しすると満足げに「はい、完了」と言って返してきた。