恋した責任、取ってください。
 
「なっちゃんさえ嫌じゃなかったら、部屋の前まで送るけど……どうする?」

「いえ、ここで」

「分かった、気をつけて」

「聞いて頂いてありがとうございました」


途切れ途切れの会話をしながら、公園を出る。

こういうときに優しい言葉をかけられると、かえって惨めな気持ちになるけど、大地さんはそれを分かってあえて気遣ってくれているんだと思うから、嫌な気持ちは不思議としない。


「じゃあ、6月のイベントで」

「精一杯盛り上げます」

「うん、期待してる」


そう言葉を残し、僅かに微笑むと、大地さんはくるりと体を反転させて駅へ引き返していく。

その後ろ姿を見て、思った。

大地さんは歩幅が大きい。

大地さんは背中が広い。

大地さんは--私を好きじゃない。


「はぁ……」


小さく溜め息を零し、ぐーっと夜空を仰ぎ、最後にもう一度だけ大地さんを見ると、ぐんぐん小さくなっていく彼に背を向けて私も歩き出す。

目の周りがジンジン熱いけど、仕方がない。

フラれたんだ、私は。

初めて好きになった人に、聞かなかったことにしてあげるから忘れてって、私だけには恋愛対象として見られたくないって言われて。





部屋に帰ると、待ち構えていたように弥生ともんちゃんが玄関まで駆けてきた。

いつも通り足にまとわりつくもんちゃんをヒョイと抱きかかえて靴を脱げば、けれど冴えない表情の弥生が横目に入って、途端に帰りが遅かったことについての罪悪感が込み上げる。


「ごめんね弥生、無理言って部屋にいてもらっちゃって。今から行っても飲み会にはもう間に合わないよね。今度からもう少し早く帰ってくるようにするから、今日だけ許して」


笑って言うと、みるみるうちに弥生の目に涙が溜まり、重力に耐えきれなくなった一滴が、つつつと弥生の頬を流れていった。

声も出せないでいると、静かに弥生が言う。
 
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