恋した責任、取ってください。
「……佐藤さんに、フラれた」
「え?」
「お姉ちゃんの妹以外の目では見られないんだって。どうしてもですか?って聞いたんだ。そしたら、ずっと好きな人がいるから申し訳ないけどって。諦めてって言われて」
「……、……そっか」
「うん」
もんちゃんを床に下ろし、弥生の頭をそっと引き寄せて肩口で泣かせてあげることにする。
そっか、弥生もか。
実は私も今さっき大地さんにフラれたよ。
その衝撃をどう受け止めたらいいか分からなくて涙もあんまり出なかったけど、私の肩に額を押し当てて啜り泣く弥生を抱きしめていると、どういうわけが私にも涙が込み上げる。
フったあとに大地さんが笑ったから、なんとなく泣いちゃいけないような気がしていたのかもしれないし、弥生の前だからかえって“姉”として見栄を張ってしまっていたのかもしれない。
ただ、やっぱり胸が痛いわけで。
我慢も限界なわけで。
「わ、私もさっきフラれたぁぁ~……」
「は!? マジで!?」
「マジだよぉ!告白自体なかったことにされたし、私だけには恋愛対象として見られたくないって言われてねぇ。そりゃあもう、いっそ清々しいくらい、きっぱりフラれたぁぁ~……!」
「お姉ちゃん、ツラかったねぇ」
「……や、弥生のほうこそツラかったねぇ」
2人でワンワン泣きながら抱きしめ合った。
足元のもんちゃんが、失恋したての私たちを慰めるようにクンクン鳴いたり体をすり寄せたりしながら、泣き止むのを待ってくれる。
しばらくすると、もんちゃんの慰めの甲斐あって少しずつ落ち着いてきて、私たちは必然的に今夜は飲み明かそうということになった。
メイクを落とし、部屋着に着替えてリビングに行くと、弥生がローテーブルの上にお酒を用意して待っていて、赤い目をして微笑む。
さて、姉妹揃って失恋した今日くらいは、胃なんて気にせずトコトン飲んじゃいましょう。