恋した責任、取ってください。
*
「本気だったんだけどなぁ。佐藤さん、家庭的な人が好きって言うから、料理とか掃除とか、もんちゃんの散歩とか、あたしなりに色々頑張ったつもりだったんだけど……諦めてって言われたら、きっぱり諦めるしかないよね」
それから約1時間。
最初は「佐藤さんの好きな人って誰だーっ!!」と言いながらヤケ酒感覚でワインをガバガバ飲んでいた弥生は、一周回ってセンチメンタルな気分になったらしく、そんなことを言い出した。
私も、お酒が入って鈍く回転する頭で同じことを考える--大地さんに忘れてと言われたからには忘れるしかないよね、と。
しかし、時間が経てば経つほど身にしみる。
諦めてもキツいけど、忘れてもキツい……。
何も言葉が出ないでいると、頬杖をついた弥生は遠い目をして独り言のように続けて言う。
「佐藤さんには点数稼ぎだって思われてたのかなぁ。いや、実際そうなんだけど、せめて佐藤さんに好かれたくてそうしていたってことは分かってもらえないもんかねぇ。誤解されたままっていうのも、これまたキツいよね」
「うん。私もそれは思う」
「お姉ちゃん、岬さんに勘違いされたっぽいもんね。最後まで言わせてもらえなかった部分。でもその言い方だったら確実に『私のバージンもらってください』だと思うよね、バカだ~」
「ぎゃー!恥ずかしいから言わないで!」
慌てる私を見て、弥生はハハッと鼻で笑う。
「でも、そう思われても仕方ない言い方をしてたなって今になって思う。いや、実際に言ったんだけど、それでも私もせめて大地さんの誤解を解いてから忘れたい。……正直なところ、しばらくは忘れられそうにないけども」
「だよねぇ」
そして、2人揃って長い溜め息。
もしかしたら私たち、一番伝えたいことを伝えられないままフラれちゃったのかもしれない。
そしたらそれは、とてもツラいことだ。