恋した責任、取ってください。
「ああでも、忘れてっていうことは、お姉ちゃんの場合はもう一回告白するチャンスがあるってことなんじゃない? 今じゃない的な」
すると弥生は、そんなことを言う。
いやいや、ちょっと待ってよ弥生、私的には今だったんだよ、そういうテンションだったの。
いつ告白するの? 今でしょ!みたいなさ。
恋愛対象から外れようとしたり、わざとみんなの中に紛れようとしたり、そういう大地さんの踏み込まれたくない部分に一歩踏み込むなら、私にはあの時しかなかったんだよ。
キュッと下唇を噛み締めて胸の痛みに耐える。
「それはどうだろ。告白のチャンスがもう一回っていうのもそうだけど、あんまり期待持たせるようなこと言わないでよ。大地さんはきっと誰からも恋愛対象に見られたくないんだよ」
「そうなの? じゃあ、なんでお姉ちゃんだけには恋愛対象として見られたくないって言ったの? 何そのキザな台詞!ドン引き!」
「なんでそんなに敵意剥き出しよ……。あれはきっと、きっぱり断るためにあえて強調したんだよ。私だけはあり得ない的なニュアンスで」
「そうなのかなぁ~!?」
うん、と頷きつつ、こっそりツッコむ。
けっこう酔っ払っているから許すけど、あんまり大地さんの悪口言わないでね、私が傷つく。
でも、心配してくれる気持ちはありがとう。
「それはそうと、これからどうする? もんちゃんの散歩、気まずいなら私がしばらくやろうか? もともと私がやってたワケだし」
言うと、クワッと弥生の顔がこちらを向く。
あまりの形相に一瞬自分の妹であることを忘れかけてしまったものの、生唾をゴクリと飲み込んで弥生の反応を窺っていると。
「……代わらなくていい。気まずいけど、急にやめたらもっと点数稼ぎだったって思われる。そんなカッコ悪いとこ、好きな人に見せらんない」
「あはっ!」
お酒のせいだけじゃない赤い顔をしてモゴモゴ言うもんだから、可愛くてつい笑ってしまった。