恋した責任、取ってください。
「でも、精神的に頑張れないときはお姉ちゃんにお願いするかも。諦めるにしろそうじゃないにしろ、乙女心は常に情緒不安定だから」
「分かった、無理しないで言って」
「うん」
そうなんだよね、諦めてと言われたからって簡単には諦められないのが恋だよね。
ちゃんと恋だから、気持ちも不安定になる。
私よりずっと経験値のある弥生に同調するのもなんだかおこがましいけど、今の私なら一緒に一喜一憂することもできるし、慰めたり慰められたり、好きな人のことを誰かと話せる。
やっと私の目も恋愛に向いた。
そういう意味では少しだけ成長できた気がする。
「で、お姉ちゃんは? 会社で岬さんに会うこともあるでしょ、精神的に大丈夫なの?」
「ああうん、なんとかするよ」
「あれ、なんかあっさり?」
拍子抜けしたように目を見開く弥生に笑う。
さっきの『カッコ悪いとこ、見せらんない』って台詞で私も頑張ろうって気になったのだ。
私だって大地さんと植樹イベントで顔を合わせるのは気まずいけど、せめていっぱい盛り上げてカッコ悪くないところを見せたい。
そう思わせてくれたのは弥生だ。
「頑張るよ」
「まあ、お姉ちゃんがそれでいいなら」
「6月のイベントを盛り上げるって約束したからね。……うん、頑張るよ。頑張る」
「うん」
頑張っても大地さんは振り向かない。
分かっている、そんなことは。
けど、頑張りたい、頑張っていたい。
想うにしろ忘れるにしろ、なかったことになった告白に自分でケリをつけられるまでは。
それから少しして、飲み明かそうと張り切っていた弥生のほうが先に寝てしまい、布団を掛けたり後片付けをしたりしているうちに、時計の針はいつの間にか深夜2時を差していた。
お酒で熱くなった頬を冷まそうとベランダに出て星を眺めていると、じわっと涙がこみ上げてきて、慌てて服の袖で涙を拭う。
同時に思った。
やっぱり、ちゃんと誤解を解いておきたい。
私たちはたぶん、急いて事を仕損じた。