恋した責任、取ってください。
 
ただやっぱり例の誤解を解くまでには至らず、悶々とした気持ちがあったことは否めない。

弥生のほうは、フラれて2人で飲んだ翌日にきっちり誤解を解き、お友だちから始めてもらっているのに、姉の私のほうがいつまでも足踏みしていたら格好がつかないしダサすぎる。


とはいえ、タイミングがない……。

イベントの感想を聞くことを口実に大地さんに連絡を取るのは裏に計算があると思われそうで怖いし、というか、私から連絡を取るという行為そのものが全てにおいてそう思われるんじゃないかと思うと、連絡なんてとてもできない。

誤解を解きたい気持ちは日増しに強くなっていくのに、そう思えば思うほど焦りが募り、情けないことに完全に行き詰まっている。


そんなどん詰まり感ハンパないの日々の中でも当然ながら仕事は待ってはくれない。

植樹イベントが終われば、7月は隔週土曜日に街の清掃活動イベントが行われるので、間もなくして、恵麻さんとその準備が始まった。


仕事は、細かい確認作業があってハードなものの、そのぶんやりがいがあって楽しい。

初めて運営側として携わった植樹イベのときに感じたけど、イベントに参加して下さった皆さんの笑顔を見ると、準備の大変さなんて一瞬で吹き飛ぶほどこちらも清々しい気持ちになる。

でも、仕事にかまけているうちに、気づけば大地さんに対して何も行動を起こせないままカレンダーは7月に突入してしまい、我ながら一体何をやっているんだという感じで情けない。

ああ、なんとかしなければ……。

でもどうやって!?





そんなある日のこと。

恵麻さんより、週末の清掃イベントに参加してくれる選手の立候補を取りに体育館に向かう命を仰せつかった私は、何とも言えない複雑な気持ちでそちらに足を向かわせていた。

すると。


「あ、なっちゃん。久しぶり」

「……お久しぶりです、大地さん」


廊下でばったり大地さんと出くわした。
 
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