恋した責任、取ってください。
そうだ、そうだった、大地さんはいつも体育館に一番乗りで来るバスケバカだった!
忘れていたわけではなかったものの、早め早めに行動する癖がすっかり染み着いていて、迂闊にも今日も普通に早く出てきてしまった……。
「今日は? どうしたの?」
「……あ、清掃イベの立候補を取りに」
「ああ、もうそんな時期か」
「そんな時期みたいです」
その後の会話は不自然なくらいにプツリと途切れ、途端に重苦しい空気がドヨドヨ漂う。
いざ面と向かって顔を合わせると、気まずい。
思っていたよりも、ずっと、ずっと。
頭では、この機会に誤解を解かないと次はいつチャンスがあるか分からないのは重々承知だ。
けど、喉元に何か堅いものを押し当てられているみたいに苦しくて、肝心の声が出ない。
フラれたあの日、頑張っていたいと思った自分はどこに行ってしまったというのだろう……。
帰ってこい、あの日の私!
と。
ふと大地さんの周りの空気が揺らいだ気配がして、驚いた私は下げていた目線を慌てて上げる。
見ると大地さんは体育館のほうに体を向けつつあるところで、行ってしまう……!と思った私は、咄嗟に大地さんのシャツを掴んでいた。
「……なに?」
「あああの、誤解を解きたくて!」
「誤解?」
引き止められ仕方なくまた向き合ってくれた大地さんは、訝しげな表情で私を見下ろす。
告白のときといい、今といい、どうやら私は、切羽詰まると普段の自分からは想像もつかないほどの大胆な行動に出るきらいがあるらしい。
新発見だ。
それはそうと、今言おう!すぐ言おう!
「あの、忘れてと言われておきながら蒸し返して申し訳ないんですけど、あの日、大地さんに遮られた最後の部分、実は『私のバージンもらってください』じゃなくて『私のことを見てください』って言いたかったんです。そこだけはどうしても誤解を解いておきたくて。お手間を取らせました、それだけです、すみません……」