【完】俺のカノジョは生徒会長
「考え直してください、神田の兄貴! あのKINGsのリーダーともあろうお方が全校集会に参加しているなんて…。もしもこのことが神田の姉貴に見つかったら…」
「黙れ、俊行」
必死に俺を説得している1年下の後輩にしてKINGsのメンバー、唯沢 俊行を俺はたしなめていた。
「神田の兄貴ぃ〜、そりゃないですよ。兄貴が俺のことたしなめるなんて! あの会長が兄貴の、むごごごごっ! 」
「だーまーれー、とーしーゆーきー」
俺は俊行の口を塞ぎにかかった。
全く、俺はこいつを信用して俺らのこと教えたのにな。こんなとこで言うなよな。ここ、俺のクラスの前だぜ?
「あ、兄貴ぃ、死んじまいます…」
「あ、悪りぃ」
俺が手を離すと俊行は激しく咳き込んだ。
「お前、ヤワいなぁ。本当にKINGsのメンバーかぁ? 」
「兄貴それはないですよ! 俺をメンバーにしたのは兄貴ですよね!? 」
「まあな」
「兄貴! 」
俊行は小さい。恐らく紗良と同じくらいだろう。だが運動神経がよく、素早い動きを得意としていた。また身長を生かした体操競技も得意で、普段の喧嘩にもアクロバティックな動きがはいる。
それを俺は評価し、メンバーに誘ったのだ。
……体力はあまりないが。
「神田くん」
甘い声が俺を呼んだ。
俺はゆっくりと振り返る。
「かいちょーじゃん」
甘い声に惑わされぬよう、俺は軽く返す。
「また服が乱れているわね。ちょっと生徒会室にいらしてくださる? 」
紗良はあくまでも生徒会長らしく俺に話しかける。会長と不良の関係を保つこと。それが俺たちで決めたルールだからだ。
「分かったよ、かいちょーさん」
俺は嫌そうに紗良の後をついていく。
だが実際は嬉しかった。
紗良はいつもこうして生徒会室で2人きりになれる時をつくってくれる。本当にいいやつだ。