パラレル
彼女はお腹はすかないが食べることはできた。トイレはどうするのかと考えたが、聞きたい訳でもないので黙っておいた。
たまに自炊をして、自信作ができた時は小皿に少し置いておくのが週間になった。翌日に、皿は洗われて片付けてあり、『美味しい』だの『すこし濃いめの味付けだったね。75点』だのと、簡単な感想が、ノートに付け足してあった。
見えない相手との、決して同時に存在することのない生活は、ゆるり、ゆるりと、過ぎていった。
一人の自由と、顔も知らない知人との共同生活という二つの楽しみを見出し、僕は意外にも心地好さを感じていた。
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