パラレル
見えない者との奇妙な共同生活にも、慣れるに従って、コツをつかんでいった。
同居人は僕よりずぼらだったのはすぐに分かった。本が出しっぱなしだったり、片付けていても、並んだ順番がおかしかったりした。ドラマも好きらしく、夜家に帰ると恋愛ドラマを見ていた。チャンネルを変えると、見ていない隙にチャンネル戻していたりした。お腹も減るらしく、上手く出来て嬉しかった肉じゃがを冷蔵庫においていたら、次の日食べようとすると、空の皿が机に置いてあった。しかも人参だけはきれいに残してあった。空腹に勝てず残された人参をおかずにご飯を食べたときは悲しかった。トイレットペーパーがきれそうになったとき、新しいものに交換してあったこともあった。換えた後の芯がトイレに置いてあるままだったのが、いかにも彼(もしくは彼女)らしかった。
楽しい独り暮らしはいつの間にか同居生活になってしまい、それに慣れていった。
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