理想の恋人って!?
　友梨が私の全身をじろじろ見ながら言った。

「友梨が一番失礼だよ。ワンピースくらい、私だってたまには着るの！　それを証明するために今日はワンピースで出かけるだけで、別に……デートなんかじゃないし」

　ちょっと言いよどんでしまったけど、それは本物のデートじゃないからだ。これは、美佳と陽太にのせられて仕方なくするデート。二人を黙らせるために私は晃一の理想の女性を演じなくちゃいけないという、迷惑きわまりない偽物のデート。

　でも、毛先のカールがようやくきれいにできたことが嬉しくて、ワックスを揉み込みながら、つい鼻歌が出てしまった。

「そのわりには楽しそうだけど」

　友梨ってば耳ざとい。

「そ、そんなことないけど……でも、たまにはうんとおしゃれして出かけるのも楽しいなって思っただけ」
「ふぅん。ま、いいけど。ね、どうせなら、私のサンダル貸してあげようか？」
「え？」

　私は鏡越しに、背後に立つ友梨を見た。

「お姉ちゃんって三センチより高いヒールの靴、持ってないでしょ。絶対私の十センチヒールの方が脚が長く見えるし、そのワンピースにも似合うと思う」
「でも、それなりにちゃんとしたレストランに行くから、オープントゥはまずいんじゃないかな」
「じゃあ、サンダルじゃなくてパンプス貸してあげる」
「でも、履き慣れてないから……」

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