理想の恋人って!?
番外編 気づかないで
 俺は気づいてたよ、明梨が兄貴のことを好きだってこと……。


 中学生になって初めて意識した。去年まで校庭や公園で当たり前のように一緒に遊んでいたクラスメイトの明梨が、俺とは違う性別、つまり女の子なんだって意識した。小学校では男子に混じってドッジボールをしてた明梨が、髪を伸ばして編み込みにしたり、校則すれすれの小ぶりのかわいらしいシュシュをつけたりしてさ。

 けれど、あの年頃のごく一般的な男子中学生だった俺は、急に女の子らしくなった明梨とどう接していいのかわからなかった。きっと明梨も同じだったんだろう。俺たちはあまり話をしなくなった。それを寂しいと思ったけれど、それは友達の一人と疎遠になったからだと思っていた。

 それが思い込みだと気づいたのは、高校の入学式の当日。お互い入学式に出るために電車に乗ろうとして、ばったり顔を合わせたんだ。

「あ、晃一、入学おめでとう。サッカーの強豪校だよね、がんばって!」

 白いブラウスに赤系のチェックのリボン、紺色のブレザーにグレーのプリーツスカートという、五駅先の公立高校の制服姿の明梨が、笑ってそう言ってくれた。

「あ、ありがとう」
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