理想の恋人って!?
「彼女、晃一の知り合い? 連れの女の子、すっごい好みなんだけど、紹介してくれよ」

 陽太の好みが明梨じゃなかったことにホッとしたものの、明梨とはあまり関わり合いになりたくはなかった。だって、明梨は兄貴のことが好きだから。

 だから、彼女が持っていたラクロスのクロスを指さして言ったんだ。

「明梨のそれって凶器? 危険なもん、持ち歩いてるんだな」

 とたんに明梨が目を見開き、艶やかな唇を尖らせて俺を睨む。

「凶器なわけないでしょ! ラクロスのクロスって言うの!」
「へーっ、てっきり明梨のことだから、その辺の男をぶちのめすために持ち歩いてるんだと思ったよ」
「久しぶりに話したと思ったら、何なの、それ。ムカツク」

 明梨がぷいっと顔を背けた。そんな彼女に、連れの柔らかそうな髪の女の子が何かささやいた。明梨は「えー……」と不満げに言いながらも俺の方を見る。

「あのね、彼女、私の友達の飯守(いいもり)美佳ちゃん。そちらのお友達の名前を教えてほしいんだって」

 明梨が連れの彼女を手で示しながら言った。俺が口を開くより早く、陽太が身を乗り出してくる。
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