理想の恋人って!?
 とはいえ、晃一は車を持っていなかったはずだから、もしかしたらお兄さんの車を借りたのかもしれない。

 晃一のお兄さんの誠一(せいいち)さんは私たちの五歳年上で、もう社会人四年目だ。大手電機メーカーの本社勤務。市内で一人暮らしをしていて、車も持っている。

 誠一さんと最後に会ったのは、私が大学一回生のときの二月だ。それ以来会っていないし、見かけてもいない。

「あれからもう二年近く経つのかぁ……」

 見上げた九月下旬の空は気持ちいいくらい晴れ渡っていて、まさにデート日和だ。

 でも、やっぱりいきなり十センチヒールは難易度が高すぎたみたいで、すぐに右足のかかとがヒリヒリしてきた。

「いったぁ……」

 この角を曲がれば駅が見える、というところで、ついに足が止まった。家からここまで来る十分ほどの間に、右足のかかとが靴擦れを起こしてしまったのだ。

 靴擦れした箇所が痛まないようゆっくり歩くと、ワンピースの白い裾が脚にまとわりつく。

 かわいいんだけど、歩きにくい。

「あーっ、もう」

 でも、私と晃一が相手の理想の格好をしてデートをして恋に落ちなければ、美佳たちも納得して、もう私たちをくっつけようとしなくなるんだし。

「仕方ない、がんばるか」
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