理想の恋人って!?
 それが何の因果か……これこそ腐れ縁以外のなにものでもないと思うけど……同じ大学になった。晃一はスポーツ科学部で私は食品栄養学部。去年の合同授業で再会してまた交流が始まったのだ。そのときにメアドやLINEのアドレスを交換して、今に至っている。

「けどさ、美佳も陽太もとんでもないことをやらせるよな」

 晃一がシャツの襟に左手の人差し指を入れて、緩めるような仕草をした。着慣れていないから苦しいっていうのが丸わかりだ。

「晃一だってスーツ、着慣れてないんじゃないの?」
「仕方ないだろ、シャツが見つからなくて、兄貴のを借りたんだ」

 なんだ、晃一も人の借り物を身につけてるんだ。

 お互いさまだとわかって、少し気持ちが軽くなってきた。

「兄貴はスポーツやってないから、俺より肩幅が狭いってこと、今気づいたよ」

 晃一がブツブツ文句を言っている。

「車も借りたの?」
「ああ」
「誠一さんのだよね?」

 私の問いかけに、晃一がチラリと視線を返す。

「おまえさ、相変わらず兄貴のこと、〝誠一さん〟って呼ぶんだな」

 相変わらずってどういう意味だろう。
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