理想の恋人って!?
 その横顔をまじまじと見ていると、晃一が横目で私を睨んだ。

「いつまでもじろじろ見てんなよ。気が散るだろ」

 その言いぐさに、私はぷいっと横を向く。

 わかった。晃一が今、私なんかと偽のデートをしてるのは、その言葉遣いと態度の悪さのせいだ。だから彼女ができないんだ。きっとそうに違いない。

 私は晃一の横顔の代わりに、窓の外を流れていく銀杏並木を睨みつけた。


 そのうち晃一がオーディオを操作してFMをつけたので、それをBGMにしながら三十分ほど幹線道路を走り、落ち着いた雰囲気のおしゃれなフレンチレストランに到着した。そこは、雑誌やテレビで何度か取り上げられたことのある有名シェフが関西に初めて出したレストランで、ランチなら私たち学生でもどうにか手が出せる値段なのだ。

 駐車場で車を降りてロックをかけたとたん、晃一が水色がかった白壁の建物に向かって早足で歩き始めた。

 チラリと振り返って私を見るので、仕方なく後に続く。

 女は一歩下がってついてこい、とでも思っているんだろうか。いったいいつの時代の話よ。晃一ってば意外と保守的。
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