理想の恋人って!?
　お皿が運ばれてくるのを、背筋をピンと伸ばして待つ。

　最初の一皿はメニューにあった通り、オードブルでタコとパプリカのマリネ。鮮やかな色合いがきれいだけど、ほんの数口で消えてしまった。続いて、グリーンピースのポタージュ。白みがかったグリーンのポタージュを、音を立てないよう気を遣いながらいただく。次はメインの和牛肉の赤ワイン煮込み・リゾット添え。ナイフとフォークも静かに扱う。揃えて置いたら食事が終わったサインになってしまうから、気をつけないと。

　緊張しすぎて味も、お腹が膨れたかどうかもわからないうちに、最後のデザートが運ばれてきた。ここのパリブレストはおいしくて有名らしい。

「ね、デザート、おいしいね」

　コーヒーを前にしてようやく人心地つき、私は向かい側に座る晃一に小声で言った。

「ああ、そうだな」

　晃一が目元を緩めて私を見た。食事の間はマナーばかり気にしていて、晃一とぜんぜんしゃべっていなかったように思う。彼も緊張していたのか、小さく肩を上下させた。

　粗相なく食事を終えられたとはいえ、やっぱり周囲のカップルと比べて若い私たちは、このレストランには不似合いな気がする。そんな必要はないのかもしれないけど、どうしても肩身が狭く感じて、私たちはコーヒーを飲み終えるとそそくさと店を出た。お会計は晃一に任せたので、車に戻ってから私の分のお金を差し出す。
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