理想の恋人って!?
「別に御曹司とかじゃなくてもいいから、ちゃんと自活してる人がいい。そうなるとやっぱり年上がいいよね。スーツが似合う人かな。それに背が高くて、優しくて、気が利いて、大人で……レディーファーストなんかもさりげなくスマートにしてくれるような爽やか人」

 私の返事を聞いて、晃一が呆れたように言う。

「そんなヤツいるかよ」
「だから現れるまで待ってるのーっ」
「そんなんじゃ、一生独身だな」

 そう口を挟んできたのは、美佳の彼氏の陽太。

「そんなことないもーん、運命の相手は絶対どこかにいるもーん。別に出会うのは社会人になってからでもいいし」

 私は講義ノートとテキストを帆布のトートバッグに入れ、それを肩にかけた。席に立てかけていたラクロスのクロス――先端にネットのついたスティック――を手に取ったところで、美佳に腕を押さえられる。

「じゃあさ、一度、スーツ姿の晃一とデートしてみたら?」
「はぁ?」

 今度はさっきよりも大きな声が出てしまった。突拍子がないにもほどがある。

「なんで?」
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