理想の恋人って!?
「へえ、おまえでもそんなことを言うんだな」

 誠一さんに言われて、晃一がそっぽを向いて怒ったように言う。

「兄貴だって今、こいつのことかわいいって思ったんだろうが」
「そうだね、見違えたよ。白いワンピースがすごく似合ってる」
「あ、ありがとうございます……」

 誠一さんに見つめられて、なんだか恥ずかしくてもじもじしたくなる。だって、外見こそ今日は特別な理由で女の子らしくしているけれど、中身はきっとずっと変わっていない。食べることとスポーツ観戦が好きで、試合を見ながら大声を上げる。自重しているつもりでも、晃一の背中や腕にびしばしツッコミを入れてしまう。

「あーあ、なんかやってらんねー」

 晃一が後頭部をがしがしと掻いて立ち上がった。「俺、やっぱ帰る」

 私は慌てて立ち上がって晃一のジャケットの袖をつかんだ。

「どうしてよー。ピザ、二人じゃ食べきれないよ」

 そんな私を見て晃一が顔を傾け、廊下を示した。

「何?」

 晃一に続いて廊下に出ると、彼がリビングに通じるドアを閉め、声を潜めて私の耳にささやく。

「おまえ、鈍すぎるだろ」
「は?」
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