理想の恋人って!?
 晃一の言葉に私は眉を寄せた。「どういう意味?」

「しっ」

 晃一が人差し指を自分の唇に当てて続ける。「せっかく気を遣って二人きりにしてやろうとしてるのに、おまえ、俺の善意に気づけよ」

「善意? 何それ。いったいなんでそんなことするのよ」

 私は大きくなりそうな声のトーンをどうにか落として言った。

「なんでって……」
「私は今日、晃一とデートしてるのよ? そりゃ、理想の恋人のフリはもういいって言っちゃったけど、普通、デートならちゃんと家まで……まあ、家は遠いから、駅まででいいけど……送ってくれるもんじゃないの? どうして私を誠一さんの家に置いてきぼりにしようとするわけ?」

 晃一が何回か瞬きを繰り返し、私をじっと見ている。

「何よ」

 私、何かおかしなこと言った?

 問いかけるように見上げると、晃一が一度大きく息を吐いた。

「明梨は……それでいいのか?」
「え?」
「兄貴じゃなくて俺が送るので、いいの?」

 その言葉でハッと気づいた。もしかして晃一は、私がまだ誠一さんのことを好きだと思ってるの……?

「あのね、私、もう……」
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