理想の恋人って!?
　人員削減ということは、仕事は減らないのに人手が減るということだ。去るも地獄、残るも地獄なんだろう。

　誠一さんが缶ビール片手に語り始める。

「就職活動のときは、会社を名前だけで選んだらダメだよ。ちゃんと業績とかも調べておかないと」
「はい」
「有名企業だからって必ずしも安泰とは限らない。みんなが知ってる企業だからって安心してたら、俺みたいなことになるかもしれない。ブラック企業じゃなかったはずなのにってね」

　私が神妙な顔でじっと聞いているのに気づいて、誠一さんが苦い笑みを浮かべた。

「や、ごめん。せっかく三人で食事をしてるのに、愚痴っぽくなってしまった」
「そんなことないですよ。私たち、これから就活しなきゃなんで、社会人の方からお話が聞けるのはありがたいです」
「そう？」
「はい。それに、誠一さんもたまには誰かに思っていることを話してすっきりするのもいいと思いますけど」
「誰かに、か……」

　誠一さんがため息をついた。ビールをもう一口飲んでぼそりと言う。

「女の子は男から愚痴を聞かされるのはイヤなんだと思ってたけど」
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