理想の恋人って!?
 誠一さんが深いため息をついて、ソファにぐったりと背を預けた。

「人員削減の煽りで仕事が忙しくなって彼女をほったらかしにしてしまったんだ……。しばらくして別れを切り出されたときに言われたよ。〝私ばかりがあなたのことを考えて想っている気がする。同じだけの気持ちをくれない人を想い続けるのは苦しい〟って。仕事が忙しいのは俺のせいじゃないのにな」

 そう言って誠一さんが私を見た。潤んだ瞳で悲しそうに笑う。その表情がとても切ない。

 二年前の私だったら、彼女と別れたなんてチャンス! と思っただろうか。それとも、こんなに頼りない表情をするなんて、と幻滅しただろうか。

「その気持ちは……伝えなかったんですか?」
「え?」

 誠一さんがわずかに首を傾げた。

「仕事が忙しくて構ってあげられなかったけど、気持ちは変わってないんだって、彼女に伝えてあげなかったんですか?」

 誠一さんが目を伏せた。

「言ったよ。でも、もう遅いって言われた。彼女の会社の上司に告白されて、付き合うつもりだって。何かあってもすぐに頼れる距離にいる人の方がいいんだってさ」
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