理想の恋人って!?
 どうしよう。鼓動がどんどん速くなる。一度気づいてしまった気持ちは、簡単に加速していく。もう晃一から目が離せない。

 前半は晃一のアシストでうちの大学が一点先制した。その後は一進一退の攻防を繰り返し、ハーフタイムを知らせるホイッスルが鳴った。

 両校の選手がそれぞれのベンチに向かって引き上げていく。私の斜め前のベンチにも、晃一たちえんじ色のユニフォームの選手が近づいてきて、三人のマネージャーがタオルを配り始めた。

「吉沢くん、どうぞ」

 千春さんがえんじ色のタオルを差し出し、晃一は受け取って顔をごしごしと拭いた。ベンチの上のスポーツドリンクに手を伸ばそうとして、私に気づく。

「明梨」

 晃一の日焼けした顔に大きな笑みが広がった。ヒマワリよりも生き生きとしていて、太陽よりも明るい笑顔。

 ああ、本当にサッカーが好きなんだな。笑顔で手を振り返した私に、晃一が声を張り上げる。

「観に来てくれたんだ」
「うん。ナイスアシスト」
「サンキュ」

 晃一はそう言ってドリンクを手に取ると、監督を囲む輪の中に向かった。四十代後半の監督から指示が出るのを、真剣な表情で聞いている。
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